日本の美術館から、トルコを想う
日本の美術館で、仏教美術や中国美術の展覧会が開催されることがあります。
中国から東側の日本へ渡ってきた美術のモチーフは、西側のトルコへも伝わっています。
今回は日本の美術館で見かける仏教や中国に由来するモチーフから、トルコで存在するモチーフを見てみようと思います。
日本で体感できる場所
仏教や中国美術をよく展示している美術館は以下があります。
■ 根津美術館
現在、企画展『ほとけを支える蓮華・霊獣・天部・邪鬼』が開催されています。
写真引用:展覧会 / 開催中|根津美術館
なかなか美術館に行かない方は書籍でチェックしてみてください。どのような美術館かわかります。
■ 出光美術館
前回の展示は『祈りのかたち -仏教美術入門』でした。出光美術館が所蔵しているものも多かったので、また見る機会があると思います。
写真引用:年間スケジュール|展覧会情報|出光美術館
■ お寺
美術館に行かなくとも、日本は寺が多くあるため仏像を見る機会が多いです。仏像には仏教のモチーフが使われています。
日本で見かける仏教・中国のモチーフからトルコを見る
仏教・中国のモチーフである吉祥文は以下があります。
■ 如意宝珠(チンタマーニ)
サンスクリット語でチンタマーニと言い、チンターは「意(意志)」、マニは「宝珠」という意味です。「意のままに願いを叶える宝」と解釈されています。地蔵菩薩や虚空蔵菩薩の持ち物とされています。下記の写真のように手に如意宝珠を持っていたりします。
写真引用:如意宝珠 - Wikipedia
3つの宝珠が積み重なっているものを「三弁宝珠」と言います。
写真引用:密教法具販売 - 如意宝珠(三弁宝珠)
■ 雲文(瑞雲、霊芝雲)
めでたいことの前兆に見られる雲で、運気の向上を象徴しています。中国の吉祥文様の一つです。特に、雲が流れているのは良い時代であることを示していました。
写真引用:霊芝雲文
■ 如意
本来は背中をかく「孫の手」であったが、仏教に取り入られて僧侶が威儀を正す僧具になりました。
写真引用:如意 - Wikipedia
「手の届かない場所でも意の如くなる」という意味を持ち、願いを叶えるということを示します。
写真引用:Ruyi (scepter) - Wikipedia
トルコではこれらのモチーフが以下のように使われています。
■ 如意宝珠(チンタマーニ)
3つの宝珠が積み重なっているものを「三弁宝珠」がモチーフとしてよく使われています。スルタンの衣装や玉座、タイルなどに描かれています。
写真引用:Sultan Caftans, Fabrics, Carpets and Sacred Coverings | Topkapı Palace Museum Official Web Site
■ 雲文(瑞雲、霊芝雲)
下の写真の赤いモチーフが雲文です。タイルの文様の中に描かれていることが多いです。
写真引用:リュステム・パシャ・モスク - Wikipedia
■ 如意
トランプのスペードのような形のモチーフが如意です。
↓一部拡大
写真引用:リュステム・パシャ・モスク - Wikipedia
ルーミーの文様と組み合わされることが多いです。
↓ルーミーは以前の記事に書いています。
日本で見かける霊獣からトルコを見る
想像上の動物は世界中に存在します。中国から生まれた霊獣は日本の身の回りにも使われています。
■ 麒麟
麒麟は中国では儒教の仁徳を備えた獣とされています。一本の角があります。日本ではキリンビールのデザインが最も身近です。
写真引用:キリンマークのデザインに隠された秘密を知っていますか? -キリン広報さんに聞いてみた | マイナビニュース
■ 鳳凰
鳳凰は中国起源の霊獣で、神鳥、鳥類の最初のものとされています。イスラーム世界では、13世紀頃から古代イランの霊鳥シームルグの形態が中国の鳳凰の形を取るようになりました。日本でも装飾やシンボルとして多く使われていて、身近なものでは一万円札に描かれているのは、平等院鳳凰堂の鳳凰です。
写真引用:鳳凰 - Wikipedia
■ 龍
龍は中国ではすべての生き物の祖として考えられています。トルコでは英雄、天界を回転させるもの、再生能力のある生命力の象徴など「善龍」というイメージですが、イランやアラブ、ヨーロッパでは悪事を働く悪龍というイメージがあります。日本では水の神のように信仰の対象となっていました。
写真引用:日本の竜 - Wikipedia
トルコでは以下のように描かれています。
■ 麒麟
写真引用:Circumcision Room | Topkapı Palace Museum Official Web Site
■ 鳳凰
↓一部拡大
写真引用:Ethnographic Arms & Armour - THE OLDEST KNOWN YATAGHAN!!!!
■ 龍
イスタンブール海軍博物館に展示されているスルタン用の船に龍のモチーフが使われています。龍は天界へものを運ぶという意味があります。
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写真引用:Naval Museum Command - Historic Galley
まとめ
中国を発信源としたモチーフは東側へは日本に、西側へはトルコに伝播しました。 日本の美術館では、トルコの美術品と共通するモチーフが隠されています。美術館に行くとき共通点を探してみると楽しいと思います。
メモ
中国のモチーフは現在の日本にも身近になっていて、様々な雑貨が出ています。
・巾着袋:和柄のものとして鳳凰が刺繍されているものがあります。豪華で綺麗。
・メンズ巾着袋: メンズの浴衣のアイテムとしての巾着袋。麒麟が描かれていてカッコイイです。
・ブックマーク(しおり):雲の文様が可愛らしいです。
参考
講義
書籍
- 護雅夫監修『トプカプ宮殿博物館 宝物館』、『トプカプ宮殿博物館 ハレムの建築』:貴重な写真と丁寧な解説付き。『ハレムの建築』の割礼の間の麒麟の写真は綺麗です。(Amazonでは見つからず、あまり市場に出ていない書籍です。国会図書館ではこちら→トプカプ宮殿博物館 (トプカプ宮殿博物館全集刊行会): 1980|書誌詳細|国立国会図書館サーチ)
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