ニャるほど、トルコ美術史

トルコ美術史の紹介。歴史を知れば、もっと楽しくなる!

地図を見るのは楽しい♪ 〜ナスーフの都市図〜

f:id:hako-hana:20170219163708j:plain

個人的な話ですが、私が住んでいる街は50年以上前に鉄道会社が開発した場所です。

そのため、駅に開通当初の風景写真が展示されることがあります。

様変わりした駅舎や、昔はあったけど今はなくなっている建物や、今もまだあるお店、など・・・。

これがとても楽しいです。

 

さて、イスタンブールの昔と今がわかる地図があります。

 

それは、ナスーフという人が書いた都市図です。

 

 

地図の比較

今のイスタンブールの旧市街、新市街は以下のようになっています。

f:id:hako-hana:20170219174058p:plain 写真引用:Googleマップから画像を90度回転。画面左が北

 

そしてナスーフが書いた1536〜37年のイスタンブールです。

f:id:hako-hana:20170220145550p:plain写真引用:Ottoman master Matrakçı Nasuh to be commemorated by UNESCO - ARCHAEOLOGY

 

ナスーフの地図を見ると、今も現存する建物が描かれています。

当時の地図であるため、ブルーモスク(スルタン・アフメット・ジャーミー)やスレイマニエ・ジャーミーは描かれていません。まだ建設されていないからです。

f:id:hako-hana:20170220152526p:plain

《注意》現在は、

・旧宮殿はイスタンブール大学の本部

・ファーティフ・モスクは当時の姿ではなく18世紀の建築様式で再建

となっています。

 

ナスーフの都市図の特徴の一つ目は建物がすべてこちら側に向いています

例えば、アヤ・ソフィアの正面は南側を向いています。

この都市図では、西側、つまり都市図を見ている私たちの向きに描かれています。

 

特徴の二つ目は植物が写実的に描かれています

上記の都市図のガラタ地区近くには、様々な植物を描いています。この土地の植物が季節を問わずに描かれています。

 

以上のことから、当時の様子がとてもわかる地図になっています。

 

ナスーフとは何者か

ナスーフは、一般的にマトゥラクチュ・ナスーフ(Matrakçı Nasuh)と呼ばれています

本名は、ナスーフ・ビン・カラギョズ・ビン・アブドゥッラー・エル・ボスナヴィー(Nasuh bin Karagöz bin Abdullah el-Bosnavi)と言います。

 

都市図を描いているため宮廷工房の画家だろうと想像しますが、実はそれだけではありません。

「マトゥラクチュ」は「棒術師」という意味です。棒術に長けていたとのことで武人(軍人)です。

そして、数学者でもあり、哲学者でもあり、歴史家でもあり、書家でもあり、詩人でもあり、画家でもあります。  天才・多才ですね。

(余談ですが、昨年2016年9月に東京でナスーフの作品を紹介する展示会がありましたが、そのときの展示会の名前は「16世紀の天才 マトゥラクチュ・ナスーフ展」でした。天才という表現です・・・)

 

ナスーフは、セリム1世とスレイマン1世の時代に活躍しました

レイマン1世のイラン・イラク遠征やヨーロッパへの遠征に同行して、宿営地を描きました。また多くの都市図を描きました。

ナスーフの描いた光景は、オスマン帝国独自の風景画様式として継承されました。

 

書家でもあったナスーフは、アラビア書道の草書体であるディーワーニー体(早書き書体)を考案したとして有名です。 

f:id:hako-hana:20170220181441p:plain

 

メモ

■マトゥラクチュ・ナスーフ『戦士たちへの褒賞』1532年

 紙で作られた要塞の模型

f:id:hako-hana:20170220172420p:plain 写真引用:Nasuh Al-Matrakî, A Noteworthy Ottoman Artist-Mathematician of the Sixteenth Century | Muslim Heritage

 

体感できる場所

トルコ

トプカプ宮殿

細密画の蔵書としてはトプカプ宮殿が一番多いようですが、どこまで公開しているのは私は未確認です。ナスーフの書いた『スレイマン・ナーメ』などがあります。 

日本

2016年は東京で展示会をしていましたが、他にナスーフの作品を体感できるところは見当たりません。引き続き調査します。(情報がありましたらぜひ教えてください)

 

参考

講義

  • ヤマンラール水野美奈子『トルコ美術のパトロンと巨匠たち』第10回(2017年1月28日)@ユヌス・エムレ インスティトゥート東京

書籍

  • 鈴木董、大村次郷(写真)『図説イスタンブル歴史散歩』:イスタンブールの歴史を街歩きしながらわかる本。p46のナスーフの地図について参考にしました
  • ガリマール社同朋舎出版編『イスタンブール』:写真や図が多く、この一冊でイスタンブールの多くのことがわかる辞書的な本。p166〜167のナスーフの地図について参考にしました
  • 護雅夫監修『トプカプ宮殿博物館 細密画』 :貴重な写真と丁寧な解説付き。ナスーフの『スルタン・バヤジット年代記』と『スレイマン・ナーメ』の細密画が載っています。(Amazonでは見つかりませんでしたが、大きな図書館に行けばある本です)

 

 

楽天に中古がありました。

トプカプ宮殿博物館 全5巻【中古】

価格:61,800円
(2017/10/9 17:47時点)
感想(0件)

トプカプ宮殿博物館 全五巻概論一冊【中古】

価格:48,800円
(2017/10/9 17:48時点)
感想(0件) 

ウェブサイト

 

 

トルコ語LINEスタンプ発売中 〜花屋のハナコちゃん(トルコ語)〜